今や外資系企業だけではなく国内企業であっても、そこへの就職や転職、あるいは入社後の昇格、昇給、または海外取引、海外転勤などの仕事ために英語力は必須のスキルになりつつあります。
中には社内の公用語を英語にする企業も現れているくらいです。
あるいは、添乗員のつくツアーではなく、好きなとところを自由に旅できる個人での海外旅行をする上でも、英語はできたほうが便利です。
さらには、日本にいても地域の活動やボランティアなどで外国人との接点が増え、自由に英語でコミュニケーションが取れたら楽しいだろうと思うこともあるでしょう。
英語力はあらゆるシーンで使われる国際語であり、今やその必要性はどんどん高まっているのです。
しかし、英語力と一言で言っても、その必要レベルはどのような目的を想定しているのかによって差もありますし、学習法も異なります。
そこでここでは、英語学習の目的別にその必要レベルと学習法のポイントについてご紹介します。
この記事の目次
目的別に見た必要英語力レベルと内容とは?
ビジネスレベル初級の英語力はどの程度?
ビジネス英語のレベルを測るには英検もありますが、何といっても一般的なのはTOEICです。転職、就職、昇格試験の時にはほぼ確実にTOEICの点数を聞かれるのが今やスタンダードです。
では、このTOEICのスコアがどのくらいであれば「とりあえずビジネスで英語が使える」レベルといえるのでしょうか。
TOEICの公式サイトでは、ビジネスレベルの英語力はTOEIC730点以上と記載されています。
しかし実際にTOEIC600~700点レベルで英語を使うビジネスシーンに立ち会って苦戦しない人はほぼいません。さらには、TOEIC900点以上の高得点者でさえ「自分の英語はビジネスレベルに達していない」と感じている場合も非常に多いという実態があります。
その一方で、TOEIC600点台で堂々と商談の交渉に臨んでしっかり契約をとっている人もいます。
ですので、TOEICは英語力を評価する指標であることは事実ですが、しかしその点数とビジネスレベルで使えるかどうか、ということの相関はあまり密接ではないのです。
では、仕事で外国人ととりあえずコミュニケーションできるビジネス英語初級とはどのくらいのことができるレベルなのでしょうか?
仕事で外国人と接点を持つ場合、相手の英語力も実はさまざまです。完全に母国語として使っていてきれいな発音で話すネイティブも、公用語として英語は使っていても発音は独特なインド人のような場合もあります。
あるいは、仕事の内容によっても、こちらが日本に外国人をお客様として迎える場合、こちらが取引先として相手国に行く場合、取引条件の交渉というシビアな商談の場合、すでに取引や提携が行われていて仕事を進めるために打ち合わせをする場合、などさまざまです。
したがって、単に「初級」と言っても、それによってすべて求められるレベルは違ってきます。
それらを非常にアバウトに概括して、初級のビジネス英語のレベルというと、以下のシーンで問題なく英語でのコミュニケーションが取れる、ということになります。
- 英語での電話に応対できる
- 英語しか話せない来客を応対できる
- 英語のビジネス文書を読み書きできる
- 外国人スタッフとの会議で通訳なくディスカッションできる
これができれば、ビジネスの初級レベルはクリアしていると言えるでしょう。できなければ、いくら TOEICが900点でもビジネスとしては英語力がないということになります。
海外への個人旅行はで必要な英語力は?
海外に添乗員のいない個人旅行をした場合、立ち寄るところが観光地や日本人がよくいく店などであれば、相手も日本人に慣れていますし、何より「売りたい」という気持ちがあるので、こちらの言わんとしていることを理解しようとするため、英語力がなくても何とかなります。
しかし、空港の入国審査のイミグレーションでは係官と簡単にでも話す必要がありますし、ホテルにおいてチェックインする、ルームサービスを頼む、不足しているアメニティを頼む、部屋を取り換えてもらうなどの時には英語での会話が必要になります。
日本人はあまり行かないけれど美味しいと評判のレストランに行ったら、料理の内容をウェイターに確認してオーダーする必要も、買い物に行けば日本への発送の依頼やあるいはディスカウントの交渉もあり得ます。
ですので、使うシーンはある程度限定されますが、そこにおいては相手の言っていることが分かり、こちらの言いたいことを伝える英語力はあったほうがいいでしょう。
そのシーンはたとえば以下のようなものになります。
- 空港のイミグレーション
- タクシーに乗った時
- ホテルのチェックインといろいろな頼み事や相談
- レストランやバーでの注文
- 買い物時の交渉
- 道迷った時
- バスや電車に乗るために切符を買う、行き先を確かめる
- 忘れ物をした、盗難に遭った、落とし物をしたなどのトラブルの時
ですので海外への個人旅行を目的にした場合の英語は、とりあえずこのシーンで困らないレベルであればいいわけです。
ホームステイなどでの外国人との交流
社会人になる前に、高校生や大学生の段階で、海外経験と英語学習のために留学やホームステイをするケースは増えてきています。この時に必要な英語レベルはどの程度でしょうか。
ホームステイを受け入れるホスト側も、何人かすでに日本人を受け入れている経験を持っているケースも、またある意味「お金のために」ホストファミリーをしているケースも多いので、比較的こちらの英語を何とか理解しようしてくれます。
しかし、一般的にいうと、英語力が高い方がホームステイ先でいろいろなトラブルを起こさないで済む傾向があります。
しかしホームステイで、それも語学研修のために行くのであれば、あらゆるシーンで日常会話としての英語を使わなければ意味がありませんから、前もってシーンを想定してその例文を暗記していく、というようなレベルではふさわしくありません。
ですので、とにかく英語で会話をするわけですが、この時に1番トラブルのもとになるのが、相手が何を言っているのか理解できていないのに、とりあえずYesと言ってしまうことです。
すると相手は、この程度の英語はわかるんだなと判断して、一層早口で話したり、どんどん話しかけて来るようになります。
すると、知らないうちにその家でのルールを破ってしまったり、ホストのお願いを平然と無視したりして、相手から悪感情を持たれ、関係性が悪化してしまうことになります。
こちらとしても今更「わかりませんでした」と言えないので、悶々としてだんだんコミュニケーションをとることが苦痛になり、部屋に閉じこもってしまい、何のためにホームステイに来たのかわからない状態になります。
さらには、お腹が痛い、暖房が弱い、夜に洗濯機を使いたい、などのことも頼めないので、自分で我慢してしまい、本当にステイがつらくなり、精神的に病んでしまう場合さえあります。
ですので、ホームステイの場合は、必要な英語力というよりも、とにかくコミュニケーションをとろうとするある種の頑張りがどこまでできるのか、ということが重要になります。
目的別の英語の学習法のポイント
ビジネス初級レベルを目指すには
ビジネス英語を学ぶには、英会話学校などを受講することが一般的ですが、仮に独学であっても以下のことを押さえて英作文学習、音読学習、会話学習をすることが、最も効率的です。
1 簡単な表現を覚える
ビジネスの実際のシーンで使われる英語は、実は意外にシンプルです。なぜなら、ビジネスの世界では意思を明確に伝えることが重要なので、はっきりとした表現を使って、Yes、Noがわかるように話します。
また英語は世界標準の公用語ですので、いろいろな英語レベルの人がいます。だからこそネイティブでも、できるだけ簡単な表現を使います。
ですので、まずはこちらも簡単な表現が使えるようにすればよいのです。
2 慣用表現を覚える
特に簡単な表現の中でも、慣用的な言い回しが多いのがビジネス英語の特徴です。
会話にしてもビジネス英文にしても、同じような内容で、主語や目的語が違うだけです。ですので、その慣用表現を覚えましょう。
3 専門用語を覚える
次に覚えるのは、その業界で頻繁に使われる専門用語です。これを上の表現に当てはめていければ、だいたいの場合は何とかなります。
4 簡単な英文法を間違えない
ただし、同時に大切なことは「簡単な文法を間違えない」ことです。旅行などでの日常会話であれば、多少文法が違っても何でもありませんが、ビジネスでこれをしてしまうとこちらの知性レベルが低いと思われてしまいます。
ですので、まずは中学英語の復習から始めることをおすすめします。
中学英語のような簡単なレベルは不要と考える人も多いですが、そこには現在完了形や使役動詞などよく使う重要な文法が入っています。
これらは実際にビジネスシーンでもよく使いますし、ここでつまづくと先に進めませんので、まずはここを固めましょう。
海外への個人旅行をする場合
海外旅行においてもまずは中学英語をしっかり勉強することです。
というのも、上で挙げた空港、駅、タクシー、レストラン、観光スポットなどでの日常会話は、中学英語レベルが使えれば十分だからです。
そのためには、以下のような内容のテキストとそれに沿ったCDがついている教材で勉強しましょう。
- シーンごとのフレーズと簡単な長文が載っている
- 文法の説明がある
- 旅行でよく使う単語が載っている
これらで、基本的な表現、単語を音読学習などによって学びます。また、旅行に実際に行くことが決まっていたら、その計画に合わせて使いそうな表現も調べておきましょう。
たとえばイギリス旅行を予定していて、その際に大英博物館に行く計画があれば、「チケットを買う時の会話」を覚える、というような感じです。
ホームステイでの英語力のつけ方
ホームステイの場合はビジネスと違って、コミュニケーションをとって良好な人間関係を作る、ということがより重要になります。
したがって、ホームステイにおいては、英語力=コミュニケーション力だと思いましょう。そのためには、以下の点に気を付けて、現地で英語力をつけていくことが大切です。
1 まずは「笑顔」。そして一生懸命聞く。さらに分からないときは分からないと言う
まずは相手が外国人であろうと何であろうと、人間同士ですから「笑顔」で相手と友好な関係になりたいのだという思いを伝えましょう。
その上で「相手の話を真剣に聞こうとしている」という姿勢をしっかり出せば、少なくとも「全然聞こうとしていないな」と思われず、悪意を持たれることはありません。
そのうえで分からなければ、”Sorry?“と聞きましょう。
ただ、何度言われても分からない場合、何度もSorryとは言いにくいですから、そういう時には”You mean,~?“、「あなたが言いたいのは~ですね?」というフレーズで「ここまではわかっているんだけれど、そこから先が分からない」ということを伝えれば、相手はわからない部分が伝わるように努力してくれます。
2 紙に書いてもらう
その上でどうしても分からなければ、メモ用紙を出して、”Would you write it down for me?“と頼んでみましょう。書かれたら意外に非常に簡単な英語だったとわかることもありますし、辞書を引くこともできます。
同時に、相手に理解したい熱意が伝わるので、人間関係的にも良好になります。
3 自分からどんどん話す
ホームステイでは、英語力=コミュニケーション力ですから、まずは自分からどんどんコミュニケーションをとるために話しましょう。
相手の英語を聞き取るよりも、こちらの英語を相手が理解する方が、意思が疎通できる可能性も高いです。その場合は、事前に使用する簡単な単語を調べておいたり、英作文してから話すと、よりよいでしょう。
英語力だけじゃない!外国人と付き合うために必要なスキルとは
以上のようなポイントに沿って英語を学習すれば、基本的な「意味内容を伝える」ということはできるようになります。
しかし、日本人同士でもそうですが、人間同士で仲良くなって、親密にコミュニケーションをとって、お互いの主張や人間性を理解する上で大切なことは語学力だけではありません。
たとえばそれは以下のような点ですが、あるいは語学力よりももっと重要なものかもしれません。
基本は「笑顔」「仲良くなりたい意思表示」そして「親切心」
ホームステイのところでも述べましたが、人間同士でコミュニケーションをとるうえで大切なことは、「あなたに好意を持っている」「あなたと理解しあいたい」「あなたに親切にしたい」というこちらの意思を伝えることです。
そのために最も重要なのが「笑顔」です。
ホームステイや海外旅行先で外国人と会話をするときはもちろん、それがビジネスシーンであっても、とりあえず先方と会ったら満面の笑顔でしっかり握手をして元気良く挨拶しましょう。そして名前を名乗ることです。
この時も、外国人にとっては日本人の名前は発音も記憶もしにくいです。ですので、簡単なニックネームを自分で考えて、”Please call me ~.”と伝えると、ぐっと距離が縮まります。
これらの一連の行動で、「あなたと仲良くなりたい」という意思は伝わります。
また、それらと同様に大切なのが「親切心」です。日本人であっても相手に親切にしてあげると、その人との距離はとても縮まります。
ましてや、特に日本に住んでいる外国人の場合、同国人や職場などの友人以外の友達は多くありません。そういう人に普段からメールを送って不便なことや困っていることはないかと聞いてあげたり、先方からの連絡やお誘いには早いレスポンスで返してあげると、とても喜んでくれます。
ビジネスの場合は意思をはっきり伝えること
特にビジネスにおける欧米系の外国人は、一部の日本人に特有なあいまいさを嫌がり、いぶかしがり、その結果それが不信感につながります。
ですので、特に彼らとミーティングや商談をするときには、同意か不同意かを明確に伝えましょう。それは例文で言うと以下のようなものです。
相手の意見に賛成する場合は、
I agree with you on that point.(その点についてはあなたの意見に賛成です)
I think that we should go ahead with this plan.(私はこの案で進めるべきだと思います)
相手の意見に反対する場合は、
I am afraid I can’t agree with it.(残念ですが、賛成できません)
You have a point there, but I beg to differ with you.(あなたの言うことも一理ありますが、残念ながら私の意見は違います)
仮に商談そのものがそれで不調になったり、ミーティングの結論が出なかったとしても、これによって彼らのこちらに対する信頼感は増し、それは次回に生きるはずです。
まとめ
いかがですか。
英語力は使うシーンや目的によって、その求められるレベルが異なり、そしてそれは単純にTOEICのスコアでは測れないということがお分かりいただけたでしょうか。
何より大切なのは、ビジネスでも旅行でもホームステイでも、あるいは日本で知り合いになった外国人でも、笑顔で接して親切にしてあげること、そして意思を明確に示すことです。
それさえできていれば、極論すれば多少難しい文法の間違いがあっても、それを超えてよいコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことは可能なのです。