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伝説の男、ボルトのラストシーズン
陸上短距離界のスーパースター、ウサイン・ボルトが今年8月にロンドンで行われる世界選手権をもって引退する。
2008年北京オリンピック、100分の1秒を争う、陸上短距離種目で両手を広げながら余裕の1位フィニッシュ。当時の世界記録をマーク。
そのあとに行われた200mでも世界記録を記録し、世界中を驚かせた。
翌年の世界選手権では、自身の世界記録をぬりかえ、またもや世界中を驚かせた怪物だ。
その後フライングによる失格や、ヨハン・ブレイクやジャスティン・ガトリンなどのライバルが現れ、かつてのおどけた姿は減り、「怪物、ボルト」から「人間、ボルト」と表現されることは多くなったものの、世界選手権、オリンピックで勝ち続けてきた男だ。
祖国を愛し、トラックでは笑顔で、世界中から愛されている彼の引退は、多くの陸上ファンを悲しませている。
しかし、ボルトは「陸上でほしいものはすべて手にした」と言っており、引退を決断したことに後悔はないようだ。
ボルトの現役としての走りは、今年の8月で見納めだ。
そんな彼の活躍をふりかえりたい。
陸上短距離界のスーパースター誕生
陸上ファンなら誰しも知っている、ウサイン・ボルトの伝説は2008年、北京オリンピックから始まった。
といいたいところだが、
その前から始まっていた。
北京オリンピック前年の世界選手権大阪大会の200mで銀メダルになっており、200mの実力が評価されていた。
それもそのはず、短距離選手としては、かなり大柄なボルトは、スタートに大きなウエイトがかかる100mより、200mを好む選手であった。
そんなボルトだが、200mのためのスタート練習で出場した2008年、ジャマイカ国際の100mで、当時、世界歴代2位の9’76(+1.8m/s)をマークし優勝。
100mでもトップレベルの実力であることを証明した。
するとすぐに、その後の試合で、当時の世界記録、9’72(+1.7m/s)で優勝した。
実は、世界記録保持者として、北京オリンピックに臨んでいたのだ。
しかし、全世界が彼の名を知ったのは、やはり北京オリンピック男子100mの決勝であろう。
会場に笑顔で手をふり、小刻みなステップをするなど、おどけた表情で登場したボルト。
今では、ボルトの影響で多くの選手がおどけたパフォーマンスをすることもあるが、当時ではありえないことであった。
100分の1秒を争う陸上短距離の試合前の選手の表情は真剣そのもの。この時ボルト以外の選手は、誰一人笑っている選手は存在しなかった。
そして、いざ、レースが開始すると中盤で他選手を大きく突き放し、ゴール手前10mで両手を大きく広げ、胸をたたきながらゴールした。
フィニッシュタイムは9’69(当時世界記録)で止まった。
この時世界中がそのタイムに驚いた。
100mを本気で走らなかった彼が、このタイムで走ってしまった。
もし本気で走ったらどんなタイムが出るのだろうという疑問が世界中を駆け巡った。
その時の映像がこれだ。
そして、その後行われた、200m決勝では、19’30(当時、世界記録)で、他選手を大きく突き放し優勝。
100年は、破られないであろうといわれた、マイケルジョンソンの19’32を破っての世界記録更新であった。
陸上界の生きる伝説、ウサインボルトの誕生であった。
負け知らずのボルト
北京オリンピック翌年、ベルリン世界陸上で、100m200m共に自身の世界記録を大幅に塗り替えたボルトだが、彼のすごさは、オリンピックや、世界陸上といった大きな大会で負けないことだ。
2011年の大邱大会の100mでのフライングを除き負けていない。
ヨハンブレイクや、ジャスティンガトリンをはじめとした多くのライバルに世界レベルの大会ではいつも勝ってきた。
彼の強靭なメンタルはスーパースターになる前の苦悩の日々が作っていったのだろうか。
天才ボルトは天才ではなかった。スーパースターの知られざる苦悩の日々。
2009年北京オリンピックで世界を驚かしたボルトは、その走りや、インタビューの受け答えなどで天才のイメージが強い。
しかし、背骨が曲がる病気を持っていたり、体格が大きすぎるためにスタートが不利になるという短距離選手として向いた体の持ち主と言われていなかった。コーチは、そんなボルトに200mのチャンピョンを狙うように指示をしていたがボルトは「100mのチャンピョンが世界最速といわれる。俺は世界で一番足が速い人間になりた
い。」といい。過酷なトレーニングをした。
若き日のボルトの苦悩。スーパースターになってからのボルトの苦悩など、表舞台では見せることのない、人間ボルトがわかる自伝やDVDが発売されている。
今年で引退
陸上界をにぎわせたスーパースターのボルトは今年の世界陸上で引退する
今年も数多くのライバル選手を圧倒しボルトらしく引退をするのか楽しみである。
ボルトの最後に世界中が注目するであろう。
今後の陸上短距離
一時代を築いたボルトが現役を引退し、さみしくなるが、今後も陸上短距離は発展していくであろう。
しかし昨年のリオ五輪、男子400mではバンニーキルクがマイケルジョンソンの記録を打ち破り世界新記録を樹立するなど、まだまだ
若手の活躍が目覚ましい。
また、日本の4×100mRでは、ボルト率いるジャマイカに続いて銀メダルを取るなど活躍が目覚ましい。
ボルトにバトンがわたるまでジャマイカとほぼ互角だったことを考えると、ボルトが引退してから金メダルを取れる可能性も出てくる。
また、山縣亮太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥をはじめとし日本人初の100m9秒代にも注目がかかってくる。
今後の陸上競技も注目したい。